ブログBlog

予防

医歯薬連携事業その2~手術と口腔管理

前回は、がん患者の方々は治療の副作用で口腔内のトラブルを抱えやすいというお話をしました。 そして最後に米国心臓協会学術集会にて“歯石除去で血管イベントのリスクが低下”との発表があったとお伝えしました。 血管イベントって何?と思われますよね…血管での出来事(トラブル)、この場合は心臓の血管において、主に『心筋梗塞』のことを指します。 心筋梗塞で亡くなった方の心臓から、本来あるはずのない歯周病菌が発見されたそうです。 お口の中をきれいにすれば、心筋梗塞のリスクが減るということだそうです。 以前こちらのブログでも「プラーク(歯垢)1mgに1億個の細菌がいますよとお話しました。 実はこれ、便と同じなんです(@_@;) ちょっと恐ろしいですよね… 手術を全身麻酔でうける際、人工呼吸器との接続のために気管にチューブを挿入します。 そのほとんどが口から挿管することになります。 ということは…チューブを介して口の中の細菌が気管支に入り込むことになります。 それが人工呼吸関連肺炎(VAP)の原因となります。 人工呼吸関連肺炎(VAP=Ventilator – Associated Pneumonia)は、人工呼吸管理開始前には肺炎がなく、気管挿管による人工呼吸開始48時間以降に発症する肺炎のことで、これは手術の合併症の1つです。 そのことを防ぐためにも、口腔管理は重要となります。 また手術だけでなく、誤嚥性肺炎(細菌が唾液や胃液等と共に肺に流れ込んで生じる肺炎 )を繰り返し、治療してもなかなか改善することのなかった高齢者の方が、口腔のクリーニングによって改善したというお話も伺いました。 まだまだ口腔管理医療連携モデル事業研修会でのお話をしていきます。 次回は、『お薬手帳』についてお話ししますね。

医歯薬連携事業その1~がん闘病中のあなたへ

国内において医師と歯科医師とでは勉強する大学や学部は異なるためか、歯科医師と医師が交流することはあまり多くありません。 しかしここ最近、その医科と歯科の壁を取り払い、連携していこう!という流れが出来つつあります。 昨日、私は愛知県がんセンターにて口腔管理医療連携モデル事業研修会に蒲郡市歯科医師会より派遣され受講してきました。 この事業は「がん患者の口腔管理を考える」ために医科・歯科・薬科に従事する者が集まり、医歯薬間における医療連携がより有機的に成り立つかを検証するために行われます。 がんは生涯で罹患する確率が2分の1、2人に1人はがんになる時代と言われ、身近な問題となっています。 がん治療は従来の手術・放射線治療・化学療法に加え、最先端治療や新薬開発など治療は多岐に渡ります。 それらの治療に伴い副作用も様々ですが、多いのが口腔内の乾燥や口内炎が挙げられます。 これらは、痛みも加わり食事をとることもままならず、QOL(Quality Of Life=生活の質)の低下や全身状態の悪化など、治療の妨げになることも多いです。 私自身は、医科大学の大学病院で研修医として過ごし、歯科口腔外科に勤務していたため、そのような患者さんと多く接してきました。 特に頭頸部に対する放射線治療では口内炎が多発し、化学療法の副作用による嘔吐など、診ている我々にとっても実に辛いものでした。 また、他の科で入院中の患者さんも数多いので、「歯が痛くて食べられない」「歯がなくて食べられない」などで全身状態が改善しない方も大勢いらっしゃいました。 更に最近、米国心臓協会学術集会にて」“歯石除去で血管イベントのリスクが低下”との発表がありました。 次回は、そのことや手術における口腔管理についてお話します。

妊娠と歯周病

今日、かよ歯科クリニックへ今日明日にでも産まれそうな大きなお腹の妊婦さんが来院しました。 以前、妊娠中期頃にも来院いただき、その後体調が優れないため治療を中断していましたが、詰めていたものが取れてしまっての再診となります。 女性にとって妊娠&出産は、人生の大イベントですよね。 この妊娠中は、女性ホルモンの影響でお口の中にトラブルを起こしやすい時かと思います。 昔は、子供を産むたびに歯がなくなるとか、お腹の子にカルシウムがとられて歯が弱くなるなどと言われたようです。 しかしこれは、つわりがひどくて歯が磨けなかったり、女性ホルモンの変化で唾液の量や質が変わったり、子宮が大きくなり胃を圧迫して少量を何回かに分けての食事や栄養の偏りなどで、単純に口腔環境の悪化が原因です。 そんなお口の中の状態が悪いと、実はお腹のお子さんにまで影響するのはご存じでしょうか? 歯周病菌がお母さんのお口の中で繁殖すると、血液を通して全身にまわり早産や低体重児になる可能性が高くなるのです。 進行した歯周病の状態で妊娠した場合、そのような早期出生や低体重児になるリスクが6倍や7倍だと言われています。 また出生後に唾液を介してお子さんへ感染することも考えられます。 スプーンやお箸は共有しないことはもちろんです。 そのように赤ちゃんを守るためにも、妊婦さんはご自身の体調以外にもお口の中のことも考えていただければと思います。 つわりがひどくてブラッシングできない場合は、フロス(糸ようじ)で歯と歯の間をお掃除するだけでも大分違いますよ。